認知症対策と障害のある子の親なき後の財産管理を実現したケース

状況

愛知県内にお住まいのAさん(男性・80代)からのご相談です。

 

奥様を3年前に亡くされ、現在、長女さん(50代)と同居しています。長男さん(50代)は独立して近くに住んでいます。

 

長女さんには知的障害があり、万が一、A様が認知症などで体調を崩されて判断能力がなくなってしまった場合、自宅不動産や預金などの管理が出来なくなることに、不安に感じていらっしゃいました。

 

障害のある長女のために蓄えはしてきたが、長女自身は財産管理ができない。もしもの時の不動産管理や預貯金の管理を長男さんに任せられないかとお考えでした。

家族信託の設計

当事務所では、Aさんがお元気な今のうちに、長男さんとの間で家族信託契約を結ぶご提案をしました。家族信託のスキームは以下のとおりです。

 

・信託財産:不動産(自宅土地建物)、預貯金

・委託者:Aさん・受託者:長男さん

・第一受益者:Aさん・第二受益者:長女さん

・財産の帰属先:長女さん

 

認知症などによりAさんの判断能力が無くなった際には、長男さんが代わりに不動産の管理、賃貸、売却、修繕、建て替えなどの一切の契約行為を行うことができるようにしました。

 

将来、不動産を売却もしくは賃貸することにした場合、その不動産から得た収益は、Aさんと長女様のものとして、長男さんが管理します。

 

また、生活費や介護費用に使うお金の管理や、介護施設の入居一時金など大きなお金を動かす際にも、信託した預貯金から、Aさんが必要なお金を引き出して対応することができるようにしました。

 

また、Aさんがお亡くなりになった後、長女さんに自宅と預金を相続させ、財産管理のできない長女に代わり、長男が財産を管理できるようにしました。

 

万が一、長男さんが長女さんよりも先にお亡くなりになった場合の後任受託者を長男さんの長男(20代)に決めておくことにより、長女さんの生活が最期まで守られます。

 

長女さんがお亡くなりになった場合は、残余財産は、長男さんへ、長男が亡くなっていた場合は長男さんの長男へと帰属させるとしました

 

家族信託を行うメリット

障害をお持ちのお子様を持つAさんは、お子様のために蓄えをしてきました。ただご自身が高齢になり、認知症になった場合または自分自身が亡くなった後のお子様の生活を信頼できる誰かにまかせる必要があると考えました。

 

障害のある方の財産管理の方法としては、成年後見制度、任意後見制度もありますが、家庭裁判所から監督されることになる、柔軟な財産の運用が困難になるなど、今回の事例ではあまり好ましくない結果になると考えられました。

 

また、今回の家族信託の設計により、認知症による財産凍結の対策だけでなく、残された長女さんの将来の生活を守ることができ、長女さん亡き後の財産の引継ぎ方を指定することもできます。

 

このようなことは遺言では不可能であり、家族信託を利用する大きなメリットといえます。なにより、Aさんがお元気なうちから、お子様たちの将来を考える機会となり、家族の絆が深まることになりました。これから20年、30年と続く家族信託です。

 

私どもとしては今後も受託者のフォローをしていく予定です。