年金を家族信託で管理したいというケース

愛知県内にお住まいのAさん(男性・50代)からのご相談です。Aさんのお父様の体が不自由になり、今後、介護施設への入所が必要になってくる状況でした。
そのため、Aさんは、今後の介護資金を用意するため、家族信託を検討されています。そこでAさんからいただいたご質問です。
「年金を信託することは可能ですか?」
運転免許証は、取得した人が自動車を運転できるものであり、免許証を他の人に譲ってもその人が運転する権利を得られるものではありません。年金も同様です。
高齢者の社会保障として設けられているため、年金受給権を信託財産として誰かに委託することはできません。
信託財産として本人以外の人物が受取ると、本来の受取人のために年金が利用されない可能性があるからです。
年金受給権はあくまでも該当者のみが請求することを認められており、国民年金法や厚生年金法で譲渡が禁止されています。
このため年金受給権自体を信託することはできないのです。

年金受給先口座を信託口口座に指定できる?

委託者が受給する年金の受給先口座を受託者が用意した信託口口座に指定することはできません。
年金を譲渡することは法律で禁止されていて、受給者が受取る前に第三者の口座に振り込まれてしまうと年金を譲渡したことになってしまうのです。
しかし現金であれば信託財産にでき、「委託者〇〇受託者〇〇信託口口座」などの名義で管理できます。
しかし年金は受給する本人名義の口座でしか受取ることができないので、年金を信託したくても信託口口座を利用できるわけではなく、本人名義の口座に振り込まれるだけとなってしまいます。
年金の管理を家族信託で行うには?
家族信託で現金を信託財産とした場合、年金は本人名義の口座でしか受給できないので、受給した年金を委託者が受託者の信託口口座に振り込んで、追加信託する他に方法がありません。
しかしこの方法では委託者が認知症などで判断能力の低下に陥った場合に、年金の入出金や口座の解約ができず、財産が凍結してしまう可能性があります。
年金を生活費や老人ホームの費用に充てている方は年金を利用できず困ってしまうでしょう。
この問題に対応するには、委託者の判断能力が正常なうちに年金の受給先口座から受託者が用意した信託口口座へと入金できる自動送金サービスを利用しておくのがおすすめです。
自動送金サービスには月額数百円程度の手数料がかかってしまいますが、各種金融機関で利用できます。
自動送金する際の注意点年金を自動送金サービスで信託口口座に送金するのはとても便利ですが、2つだけ注意点があります。
自動送金サービスは申込みから5年間のように送金できる期間が設けられている場合があります。
サービスを利用する場合は、期間が設けられていない金融機関を選んでください。
また、定期的に年金を信託財産に追加するには、あらかじめ信託契約書にその旨を盛り込んでおく必要があります。